地球温暖化、炭素と地球

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親子のための科学と題して、いくつか記事を書いてきたが、最近、グレタ・トゥーンベリさんが話題になっている事もあるので、温暖化問題について、純粋な地球科学、地球化学の側面から説明してみようと思う。

まず、事実として、地球の対流圏内の二酸化炭素濃度は季節変動の幅を優に超えて増加している。

気象庁 | 二酸化炭素濃度の経年変化
気象庁が提供するページです
二酸化炭素濃度の全球平均経年変化グラフ
https://ds.data.jma.go.jp/ghg/kanshi/ghgp/co2_trend.html

↑気象庁のデータで公表されているように、30年間で15%弱濃度が増加している。

そして、もう一つの事実として、二酸化炭素は温室効果ガスである。
これは、二酸化炭素という気体分子の構造上の性質であり、赤外線を吸収し、再放出する性質があり、要するに温かさを蓄えるバッファーになるのである。

そして、補足的にだが、地球大気の温室効果ガスは二酸化炭素だけではなく、メタンや一酸化二窒素、フロンガスや代替フロン、そして最も大きな効果のある気体は水蒸気である。

さて、では二酸化炭素を減らせば、地球温暖化は抑止されるのか?

答えは、わからない、というのが現状である。が、多くの科学者はそう考えているし、政治的にもそういうことになっている。

もっとも大きな温室効果ガスは水蒸気であり、その効果は60%とも80%とも考えられている。一方の二酸化炭素は10~30%程度と、地球に関して言えば、いわゆる主要因ではないと考えられている。

ただ、水惑星と言われる地球表層(陸や大気中)の水蒸気量をコントロールすることは不可能と考えられる。

一番がダメなら二番を、ということでもあるが、本当の理由は、上に書いた事実である二酸化炭素濃度が増加しているから、それをなんとかすれば温暖化が抑制されるのではないか?という考えのもと、温暖化対策と銘打った政策などなどが執り行われようとしている。

一方で、政治的な話としては、会議をしているだけで行動していないじゃないか、とグレタ・トゥーンベリさんは主張しているようだ。

現状を詳しく知ろうよ

二酸化炭素濃度は本当に増加しているのか?

もう少し長い目で二酸化炭素濃度の変化を注視していたデータがある。

http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/monitor/index.html

これを見ると、もう60年もずーっと、年平均では増加していることがわかる。これらは、実観測データなので、かなり信頼にたるデータである。

もっと長いタイムスケールの二酸化炭素濃度の増減も調査されている。
ただし、観測をおこなっていなかった昔の値は、氷床コアや年輪の化学分析値から推察された値なので、少し信頼性は劣るが、少なくとも現在の人類の叡智の結晶であり、もっとも確からしいデータ結果である。

https://www.ipcc.ch/site/assets/uploads/2018/03/fig3-2.gif
https://www.ipcc.ch/site/assets/uploads/2018/03/fig3-2.gif

左の真ん中のグラフb)を見ると、西暦900年頃から1800年頃まではほぼ横ばいの280ppmという濃度と推察されていて、そこから急に増加していることがわかる。赤い線は、上に載せた実観測データと同じものである。

逆に、左下のc)や右上のd)のグラフを見ると、ここ一万年では、260から280ppmくらいを推移しているが、40万年遡ると、その間には180ppmくらい低濃度になったりと、かなりの変化をしていることがわかる。
また、右の真ん中と下のグラフe)とf)を見ると、2000万年よりも昔には、二酸化炭素濃度は今よりもずっと高かったと推察されている。

これらは面白いデータで、人類の歴史からすると、ここ50年の二酸化炭素の増加はありえないくらいやばいけれど、地球の歴史で考えると、まあ、そういう事もあるかもね、っていうくらいの変動であることがわかる。

ただ、ここで科学者に重要だと指摘されていることは、たったの50年での変動にしては大きすぎることである。

どうして二酸化炭素は増えているのか?

それでは、どうして二酸化炭素が増えているのか。というか、二酸化炭素は誰が出しているのか?そして、どうして消えないのか?を説明する。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/55/Carbon_cycle-cute_diagram.jpeg
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/55/Carbon_cycle-cute_diagram.jpeg

この図は、二酸化炭素というよりは、炭素の循環を示している。(Wikipediaからで申し訳ないが、おおよそ正しいし、わかりやすいので引用した)
二酸化炭素はガスだが、例えば、木を燃やすと二酸化炭素になるが、元の木はガスではなくてセルロースなど個体である。
つまり、二酸化炭素は形を変えて地球の様々なところに存在している。

図の見方を解説すると、Atmosphere 750とかの黒い数字は、budgetと言って炭素の存在量GtC(ギガトン炭素量)を表している。矢印に付随している紫の数字はその移動量でGtC/yr(年間ギガトン炭素量)を表している。

二酸化炭素が増加していますという事実は、大気中のことを言っているので、Atmosphereの750GtCが少しずつ増えていることを表している。
なぜ増えているのか大気を中心に矢印を追ってみると、図の左側から、121.3、60、60、1.6と記されている。
この4つの数値は年間値で、大気中の炭素の121.3Gtが樹木に取り込まれ、60GtCが放出され。そして、Soilsつまり土壌から60GtCが放出され、vegetationつまり農業活動により1.6GtCが大気に放出される。ということが書いてある。

この数値からわかることは、樹木や土壌と大気の間での炭素のやり取りは、0.3GtCだけ大気側に偏っている、つまり大気中に年間炭素が0.3Gt放出されていることを意味している。

そして、その右側の上下の矢印は、海と大気のやりとりを表しており、2.0GtC/yr海が吸収していることを示している。さらにその右の針葉樹林が0.5GtC/yr吸収している。

そして、一番右の工場(つまり工業活動)から5.5GtC/yr放出している。

さて、これらを足し引きすると、0.3-2.0-0.5+5.5=3.3(GtC/yr)となり、結果的に年間3.3Gtの炭素、二酸化炭素にして12.1Gtの二酸化炭素が大気中で増えていることがわかる。

実際のところ、これらの放出・吸収量は研究結果によって値は異なるため、この数値自体が完全に正しいかは怪しいところだが、科学技術の進歩によって日進月歩で精度の向上がなされており、概算としてはかなり正しい値と考えて良いだろう。

さて、もう一つ重要なことがこの図には描かれている。

見づらいので、もう一度図を載せる。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/55/Carbon_cycle-cute_diagram.jpeg
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/55/Carbon_cycle-cute_diagram.jpeg

上では炭素のやり取りに注目してみたが、実はここからが私が言及したかったことになる。
それは、炭素budget、存在量だ。

大気が750GtCに対して、土壌が1580GtC、農業活動が610GtC、工業活動が4000GtC、海洋表層が1020GtC、海洋生物が3GtC、溶存有機炭素が<700GtC、海洋深層が38100GtC、堆積物が150GtCということになる。

沢山羅列したけど、陸上や海洋のほうが、ずっとずっと炭素が沢山存在している。これが重要なポイントの一つ。

そして、例えば大気の場合、存在量が750GtCで、放出量がおよそ210GtC/yrだから、仮に全ての炭素が平均的に移動するとすると、およそ3.6年で入れ替わることになる。この入れ替わりの速度のことをlife time、寿命という。

つまり、今人類が吐き出した二酸化炭素は、およそ3.6年後にはどこか他の状態になっているということ。
他の系、例えば、樹木・土壌・農業の陸上系でみてみると、土壌と農業の合計が2190GtCで、吸収量が121.3GtC/yなので、およそ18年で入れ替わることになる。
一方、海洋は、表層では4.4年、深層ではなんと381年となる。

この寿命の違いこそが重要なポイントで、二酸化炭素および炭素の増減を考える、もしくは大気中の二酸化炭素を減らそうと考える時に重要なポイントである。

それでは、どうしたら大気中の二酸化炭素は減るのか。

今でも、温暖化というと、熱帯雨林に代表される植物を大事にしましょう!彼らが光合成をしてくれればなんとかなりますよ!なんて考えている人がいるような気がする。

が、もうお気づきの通り、陸上植物は、たとえ光合成しても18年で元に戻ってしまうのだ。
これは肌感覚でもわかると思う。だって、植物が目一杯光合成して二酸化炭素を吸収したとしても、草だったら、毎年枯れて土に戻るし、大木でも100年程度で枯れて土に戻っていく。
土に戻るというのは、土壌中のバクテリアなどが呼吸に使用しセルロースが二酸化炭素になることを意味し、それは大気中に二酸化炭素が帰っていくことを意味している。

つまり、どんなに頑張っても、世界中を木だらけにしても、すぐに元に戻ってしまうということだ。

では、海洋深層はどうだろうか?381年間の寿命がある。
つまり、例えば、光合成して炭素を蓄えた木を深海に投げ捨てる。そうすれば、381年間は二酸化炭素を取り除くことができるわけだ。

急激に増加した100年程度の歴史に対して381年間の猶予、これは結構大きいのではないだろうか?

そうでもないだろうか?

IPCC国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)の予測でもっとも最悪のシナリオでは、西暦2100年には地球の平均気温が4℃くらい上昇する。

もしそうなった場合、多くの種の絶滅リスク、世界の食糧生産が危険にさらされるリスクがあるらしい(https://www.wwf.or.jp/activities/activity/1035.html)。

深海の調査はとても精力的に行われている。

それでも、直接観測した海域は本当にわずかだし、間接的な観測でさえ未調査海域がほとんどである。
つまり、深海に木を投げ込んだ時にどうなるか?そんなにうまくいくのか?不明である。

それを解明するための研究が終わるまでに100年という時間は長いのか短いのか?

一方、すでに取り掛かっている研究もある。
二酸化炭素の地下貯留という話を知っているだろうか?
二酸化炭素は私たちの身の回りの常温常圧では、ガス、気体で存在しているが、低温高圧下では液体になる。その性質を利用して、温度が低く圧力の高い海底下堆積物中に貯留しようというプロジェクトだ。
実際に海底下には天然の液体二酸化炭素なども存在しており、研究が進められ、様々な知見が得られている。

この考えの良いところは、自然に元にもどるまでには、途方もない時間がかかること。
実際のところどれくらいのタイムスケールなのかわからないが、海底堆積物がプレートに運ばれ、マグマ中に絞り出され、火山ガスとして出てきたり、隆起して陸上にあがってくるまでの時間、炭素を大気中から取り除くことができるのだ。

あれ?これって、あれに似てない?

そう、石油や石炭。あれらは、元々は数億から数千万年前に陸上にあった炭素。

一方、この方法の危険なところは、地下に封じ込めたはずの二酸化炭素が、なんらかの原因でぶくぶく出てきてしまうことだ。
液体二酸化炭素は密度が小さいので、海中に出てくると、上昇し大気まで出てくる。
しかも、少しでも漏れ出てくる状況になっていると、圧力が下がるので、全部出てきてしまう可能性がある。

なんらかの原因、もちろん、人為的なミスも考えられるが、予想仕切れないのが地震。

原発事故が起きたポスト福島時代の今、完全な安全性が担保されない限り、大規模な実施は難しいだろう。

私たちにできることはあるのか?

汽車に乗っただとか、飛行機はやめろだとか、グレタ・トゥーンベリさんやその周辺、カウンター勢力も含めて、それらの議論は果たして、本当の意味で前進しているのだろうか?

化石燃料を利用した乗り物は、地面に埋まっていたはずのものを人間の都合で、数千万年の時間をワープして大気中に放出してしまうことが問題であって、もう掘り出したものは現在の科学技術では元には戻せない。

すでに消費を抑えるだけでは太刀打ちできない状況になっていやしないだろうか?

もしかしたら私たち人類が持つ唯一のカードは、人類の英知である科学研究のスピードを加速させることなのかもしれない。

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